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風の草刈り−大地の再生–

  • 1 日前
  • 読了時間: 3分


草刈りというと、地際まですっかり刈り払い、更地のようにきれいにすることを思い浮かべる方が多いかもしれません。


けれど、大地の再生には、それとは違う草刈りのあり方があります。矢野智徳さんが実践されてきた、風の草刈りです。


風の草刈りが大切にしているのは、草と戦わないこと。風に倣い、草丈の高いところ、低いところ、刈るところ、あえて残すところをつくります。


そうした濃淡をつけながら手を入れることで、風が草の間を抜けやすくなり、地面まで届くようになります。


風がまったく通らない、密に茂った草むらの中は、湿気がこもりやすく、蒸れたような空気が滞りがちです。反対に、根こそぎ刈り払われて何もなくなった地面は、日差しと乾いた風を直接受けて、今度は土が乾きすぎてしまうことがあります。


そのどちらでもない、風がやわらかく通り抜けていく状態をつくること。


この草刈りのあり方は、地面の下の話ともつながっています。


以前お話しした通り、健やかな土地では、地中に空気と水の道——通気浸透水脈が通っています。地上で風がよく通う場所は、地中の空気の巡りも良い。草の刈り方一つが、地上と地中、両方の呼吸に関わっています。


草を刈ることは、地上の風通しを変えるだけではありません。


地際で強く刈り取られると、草はそれに抗うように、地上へ勢いよく茎を伸ばし直そうとします。けれど、風にしなう高さでやさしく刈られたときは、少し違う動き方をするようです。


地上へ急いで伸び直すのではなく、地面の下——浅いところで枝分かれを増やし、細い根、細根を、そっと張り巡らせていきます。


この細根が増えることで、土の中には、目に見えないほど小さな隙間がたくさんできていきます。土がふかふかとやわらかくなり、空気や水がその隙間を伝って通りやすくなる。通気浸透水脈が、細根という形で、少しずつ豊かになっていくのです。


そして、細根を張り巡らせることに力を使った草は、地上部の伸びがおだやかになり、次に生えてくる草も、以前ほど勢いよくは伸びてきません。地際で刈るたびに強く反発するように伸びる草と比べると、風の草刈りを続けた草地は、少しずつ穏やかになっていきます。結果として、次の草刈りの手間も、自然と軽くなっていくようです。


だからこそ、風の草刈りでは、機械で一気にすべてを刈り払うのではなく、その場所の草の茂り方や、風がどこから吹いてくるかをよく見ながら、風にしなう高さを見極め、少しずつ手を入れていきます。時間も手間もかかりますが、その分、その土地に合った、穏やかな草地に近づいていきます。


この考え方は、庭のない方の暮らしにも、きっと通じるところがあります。何かを整えるとき、力ずくで一気に押さえ込むよりも、少しやさしく手を加えるほうが、かえって物事が穏やかに落ち着いていく、ということがあるように思います。


草刈りを終えた庭に、夕方の風が吹き抜けていきました。刈られたところも、残されたところも、同じ風の中で、それぞれに揺れています。

 
 
 

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